toggle
2018-03-18

メルボルン大阪レース2018 航海報告 レース前準備編

本日レーススタートが予定されていた『メルボルン大阪カップダブルハンドレース』
先ほど、現地の森村氏より
「強風のためハーバーを出ることが出来ず、スタートが明日に延期されました。」
とのご報告をいただきました。
それに先がけ、各講習会参加の様子など、森村氏よりレース前レポートが届きましたのでお届けいたします!

・・・・・・・・・

メルボルン大阪レース2018 航海報告 レース前準備編

記:森村圭一朗

2月6日早朝にメルボルンに到着したが、やはり艇のインスペクションが非常に気になっていたので、レースコミッティーメンバーのジョージになるべく早くインスペクションを受けたいと申し出ると「ほな、今日やろか」と早速インスペクターの手配がされる。
どんな見逃しがあるのかわからないので早くやりたいのは山々だけど、5000マイル以上帆走ったのち数時間でインスペクター到着は正直きつかった。フットワークが軽すぎることに少々戸惑いながらも散らかった船内を片付けてインスペクションを受ける。

インスペクターはORCV(Ocean Racing Club Victoria: ビクトリア州外洋帆走協会)所属のデイビットさん。メルボルン大阪レースの期間中はしょっちゅう桟橋をウロウロしてあっちの船でちょこちょこ、こっちの船でちょこちょと数回に分けてインスペクションを忙しくされていた。2時間ほどで最初のインスペクションを受け、水密バルクヘッドの位置など構造上のインスペクションを受ける。復元消失角度のデータに関してはかなり厳密な審査があるらしく、日本のORCでやった検査の書類を一旦持ち帰って検討するとのことであったが全体的には非常に印象が良かった(と思う)。その後インスペクションはさらに2回に分けてやっていただいたが、2回目は4時間、3回目の最終は1時間とトータルで7時間かけて200項目以上のインスペクションを終了した。(結局最終インスペクションは3月11日に終了)

インスペクションには2つの講習を受け、試験をパスして免許皆伝されることが必須となっている。
一つはSSSC(Safety and Sea Survival Certification)講習、もう一つはFirst Aid講習である。
それ以外にもクラブハウスではセールリペア講習とFirst Aid講習に上乗せして独自の救命講習を行なっており、これは任意での参加であった。

 

まずはSSSC。
参加料お一人様約35000円で2日間の講習。
高いか安いかはそれぞれの判断と思われるが講習の内容とこちらの物価の高さを考慮すると妥当な料金と思った。

参加者は35名ほどで年数回ORCV主催で開催されているらしい。プールを使った実習があるので市内の大学施設の一部を借りて行われる。

SSSC(Safety and Sea Survival Certification)

SSSC(Safety and Sea Survival Certification)

1日目は座学でたっぷりと講習を受けて翌日はライフラフトを使った講習。
プールではすでに膨らんだライフラフトが2杯浮かんでおり、さらにもう1台はプールの飛び込み台からコンテナをぶち込んで、どうやって開いていくかを実際に見学できた。思ったよりかは膨らむのに時間がかかるなぁとの感想。
その後10人程度のグループに分かれ、それぞれが日常使用しているカッパとライフジャケットでプールに飛び込む。僕は某社の水圧感知式膨張ライジャケで試したがかなり勢いよく飛び込んだにもかかわらず開かず。最終的には自分で紐を引っ張って膨張させた。水圧感知式のものは少しタイムラグがあるらしい。
水中では、保温姿勢をとったり救助するときの泳ぎ方をやったり、ラフトをひっくり返されてそれを元に戻す作業、人間をラフトに引き上げる作業、ヒービンブラインの投げなど、様々なことをやったが必ず全員がそれらを一度は経験できるようなプログラムであった。結局1時間半ほどカッパ着て水中でドタバタやったので結構体力を使う。

SSSC(Safety and Sea Survival Certification)

その後は少し座学をやってさらに広い運動場で信号紅炎の実演。
発火すると相当熱い。使用済みの発煙筒を水の入ったバケツに入れるが水が沸騰していた。モクモク煙が上がるのだがもちろん消防署の許可は事前にとってあるとのことであった。マークシート式の試験を受けて80%の正解を得てめでたく免許皆伝となる。

SSSC(Safety and Sea Survival Certification)

 

次はFirst Aid講習であるが、これはいわゆる日本でもやっているFirst Aid講習で一般市民に解放されているやつでいろんな方が参加されていた。外洋に行く前に一般的な救急知識を得ましょうということだが、ロールプレイ講習なども含まれておりなかなか本格的で面白かった。不肖、外科医ながら日本で講習を受けたことはなく、どんなものなのか日本に帰ったらお忍びでうけてみようかしら。
今回のレースに必要と思われる特殊な救急知識、例えば深い傷を負ったときの縫合処置などはORCV独自講習で補完するという感じで効率良く一通りの救命処置などを体験するようになっていた。

First Aid講習

First Aid講習

インスペクションに必要な医薬品リストに載っている薬品や包帯などを薬屋に買いに行ったが、支払いのときにレジのお姉さんに「多分相当ダメージ受けるよ」と言われたが、請求書が約11万円であった。
存分にダメージをくらい、し瓶(これもなぜかリストに載っている)をかかえてトボトボと船に帰った。

 

さて、
ここでは書ききれないほどいろんなことがあったが3月18日にスタートを迎える。
ちょうどバス海峡を前線が通過するらしく沖合ではすでに50Ktが吹いている。明日予定通りスタートできるかどうかは当日午前11時の最終艇長会議で決定される。

2018年3月17日 メルボルンにて

ほかの記事を読む