幸希と愛の200マイルトライアルレポート
こんにちは。JORA海外会員としてトレーニングに励んでいる松苗幸希さんと吉富愛さんが、3月某日200マイルトライアルを成功させました。お二人のレポートと動画をお楽しみください。
*この200マイルトライアルはコロナウイルス(COVID-19)による移動自粛要請前に行われています。
【動画】幸希と愛の200マイルトライアルレポート
【松苗幸希レポート】
今回は200マイル無寄港セーリングを体験させて頂きました。
200マイルという距離はヨットで走るとおおよそ丸2日間くらい走る距離であり、夕方4時ごろに出港して2回夜を超えるといういわゆる2オーバーナイトというセーリング は初めての経験です。
メンバーはオーシャンセーラーの北田さん、大学生にして一人で本州1周の経験を持つ吉富愛さん、そしてオフショア数回経験ありの私の3名。
今回はJORAの森村副代表所有艇で大阪北港にあるデへラー(DHL38)という艇を使わせて頂きました。
もしも海が荒れたら…とかなりの不安がありましたが、とてもいい艇だと聞いていたことを頼りに安心材料としました。
当日は関東から朝一で西宮に移動し、昼前に準備を進めてもらっていた皆さんと合流、念のため2日半くらいの食料の買い出してそのまま出発という素人的にはタイトと感じられるスケジュールで出港しました。
私の今回の一番の目標はナイトセーリング をまずは知るということでした。
過去の経験で真っ暗闇の中でヘルムを取るということがいかに難しいかを知っていたからです。
また、1オーバーナイトは今までに2回ほど経験させて頂いたことがありましたが、”ワッチを組む”という作業が初めてだったので短時間睡眠で自分の身体がどれだけ持つのかということにも興味がありました。
今回のトレーニングは基本的に女子2人で全てやり、北田さんは何かあった時の補助であるという方針でした。 初めて一緒のヨットに吉富さんとオフショアド素人の私のチームはどんな珍道中になるかと思いましたが、吉富さんがセールのリーフも計器の使い方もテキパキこなしてくれたので外洋ヨット部って流石だな、1人で本州1周しただけあるなとすぐに感じることが出来、一緒に乗れることにワクワクしました。
夕方前の出港だったので、割とすぐに夜を迎えることになり、さっそく夜の緊張モードに気持ちを切り替えます。
完全に暗くなる前から風が少しずつ強くなり始め、目的地に対して上りのレグであったことから艇のヒールとこのピッチングと共に夜を迎えるのだろうということが想像できました。
まずは吉富さんとワッチの時間配分をどうするか話し合いました。多くの人はだいたい2〜3時間おきに交代するということを聞いていましたが、まずは1時間から試して、明日の夜は2時間にするという取り決めになりました。
20時を越えるととにかく暖まりたいという気持ちしか生まれない状況になってきました。寒い、揺れる、眠いのトリプルパンチの中、初めてヨットの帆走中に睡眠を取るというワッチオフを経験することとなりました。3月中旬の関西はそこまで寒くならないだろうという考えは全くもって甘く、想像を遥かに超える寒さとなり、ワッチオフの順番が来るとすぐにトイレを済ませ、カッパを着たまま震えながらベッドに倒れ込みオフショアやってみたいと思った自分バカー!と思いながら目を瞑りました。 しかし、1時間交代なのですぐにワッチの順番が回ってきます。やっとの思いで目を瞑る体制になったのに起きて時計を見ると1時間しか進んでない…これを夜の間6交代もするのは気持ちが持たない‼︎と思いこれは絶対正解じゃないということがわかりました。 2時間交代に切り替えてみたところ、こちらは正解。もしかしたら3時間でもいいかもしれません。
少し気持ちも楽になってくると、1人で他の船舶にぶつからないか、自船は目的地から逸れていないかと監視する緊張感を感じられるようになり、普段味わえないスリル楽しみながら過ごすことが出来ました。
朝を迎え、気象状況はかなり穏やかになり、気温もカッパを全て脱ぐくらいまで上昇し、夜に比べると本当に天国でした。
昨晩の寒さと揺れでかなり疲れたのか日中のポカポカ陽気では居眠り(というか爆睡)を多くしてしまいました。
GPSを見てみると昼ごろにどうやら目的地の徳島沖に到達したみたいでしたが、ワッチオフや居眠りでいつのまにか周りに陸地が全く見えない場所まで来ていたので、自分の位置の把握もとても難しいなと感じました。
しかも、折り返し地点、やっとジェネカーランで帰れると思ったら風向きが真逆に変わり、またもや上りとなってしまい、走りとしては少し物足りなさが残りました。
天気も良く、船の揺れもない。環境が良くなってくるとだんだんお腹が空いてきます。
噂で聞いていた通り、洋上でのごはんは普段は食べないカップラーメンもただ焼いただけのウインナーもめちゃくちゃ美味しく感じることが出来、洋上の醍醐味です。
おやつも進みます。
私達3人全員が納得したふんわりきな粉名人。
のんびりと船を進め、2日目の夜が近づいてきました。
夕方近く陸地に大分近づいて来たところでいい風が入り、今回試したかった計器を使って帆走することと、今までディンギーで感じていた感覚を数値で見ることが出来ました。
この感覚を数値化するという作業は、いつかやってみたいな、これがわかればどんなヨットでも早く走らせられるのではないかという考えのもと試すことが出来たのは自分にとってとても良い収穫でした。
そして最後の最後には計器の数値と感覚を合わせてこの感じかな?と思えるコツを掴んだ気がしたのですが、後にわかったことですが計器は海に出て最初に細かい設定をしないと正確に使いこなすことが出来ないらしいのです。
非常に奥が深すぎる世界でありますが、だからこそ勉強しがいのあるジャンルだなということを感じました。
その後無事に朝4時に到着し、早朝にも関わらず使用させて頂いた艇のクルーの富田さんがお迎えに来てくださりました。それから一眠りさせて頂いている間に森村オーナーさんや135イーストの蔵田さん、計器の調整の太田さんなどが集まっており沢山の方が支えてくださっていたことがわかりました。
ご指導、ご協力頂きありがとうございました。また機会があれば、今回勉強できなかった気象の理解を深め、思った通りに天気がやってくるようになることがこれからの目標です。
【吉富愛レポート】
2オーバーナイトの200マイル無寄港練習を行った。私にとって無寄港長距離での最長であった。
出航後は安定して南から6〜9ktの風が吹いており、ジブでタックを行いながら友ヶ島水道を目指す。その中ではオートパイロットの感度の調整や、モードチェンジなどを行い、航海計器の使い方を研究しながらのセーリングを行った。
夜の航海では松苗さんと二人で一時間ごとのワッチを組み行う。しかし、一時間では疲れが取れず、深夜に二時間ごとのワッチに切り替えた。夜の航海では注意点がいくつかあった。暗い中で作業を行うため、暗くなる前の準備が大事になる。また友ヶ島水道での航海では、大型船や漁船との灯火による自船との見合い関係が難しいとワッチの際に感じた。
慣れないオーバーナイトがあけ、日中は風がないセーリングになった。休憩できる時に休憩するということで風が弱い日中を使い、しっかり休憩をとり2日目の夜に備えた。2日目は夕方ごろから風が吹いてきた。そこからは昼に休憩したことにより、夜のセーリング練習もしっかり取り組むことができた。どこで休憩を取るかが大事であると思った。この時は一度だけ二時間ワッチを組み、それ以外は最後まで二人でのセーリングの練習を行った。その中で航海計器を見ながらクローズホールドに持っていくなど実験を行い船を知るにはいい勉強になった。
この船は今回の練習が初めてであったため、ものの使い方や航海計器の使い方をしっかり知ることができる良い機会になった。また、初めての長距離であったため自身の体調管理、体力温存方法、船での過ごし方を知る機会になった。
自身の次の課題も見えた。今回の経験をプラスに今後はより体力をつけどんな時間帯でも動けるように調整をしていきたい。また継続してセーリングに集中できるための体力が必要に感じた。今回は風向き的にジェネカーはあげなかったため次回の練習ではダウンウィンドの練習をしっかり行いたい。
松苗幸希:北海道札幌市出身。49erFXでの活動を中心として、 国体、 キールボート(クルーザ一)でマッチレ一スや外洋レ一ス、北海道、関東の中高大学生のコ ーチングも行う。
詳細はこちら→ Sailors 松苗幸希
吉富 愛:大阪府出身。神戸大学在学中。フランスマルセイユで行われた世界選手権での経験から、2019年神戸大学在学中にニュージャパンヨットのSOLEIL LEVANT(26フィート)に乗りシングルハンドで本州一周を達成させた。
詳細はこちら→ Sailors 吉富愛
2020/08/30
佳代と冨ちゃんの灼熱の夏!ダブルハンド200マイル無寄港・激トレレポート