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2021-03-29

JOSA虎の穴 冬の大阪湾トレーニング

こんにちは。広報の堀内です。前回児玉理事の記事前文で紹介がありましたが、新生JOSAとして各チャレンジプロジェクトが進んでおり、シーサバイバル・トレーニング・コースにも参加された川西由美子さんと守屋有紗さんが、3月某日森村理事のバルトロメでJOSAダブルハンドトレーニングを行いました。トライアルに参加されたお二人のレポートをお届けします。

左から守屋氏、北田代表、川西氏

左から守屋氏、北田代表、川西氏

守屋有紗レポート

【はじめに】

3月某日、大阪湾にて、2日間のダブルハンドトレーニングを実施しました。今回の目的は、ダブルハンドの基本動作を練習し、ダブルハンドに慣れることでした。私自身、ダブルハンドの経験があまりなく、初めての船で、一緒に乗るのも初めての方たち、という状況の中、少し緊張気味で当日の朝を迎えました。

【トレーニング1日目】

■集合~出艇

朝9時半頃にハーバー集合。北田さんとは事前に少しやり取りはしたものの、お会いするのは初めてだったのでどんな方かドキドキしていました。川西さんとも、西宮のハーバーでよくすれ違ってはいましたが、ちゃんとお話するのは初めてでした。実際にお会いし、お二人とも親切に接してくださったのでとても安心しました。

集合後、太田さんからB&Gの使い方説明、冨田さんから船内の説明をしていただきました。B&Gは普段使用しているものと近い機種でしたが、オートパイロットの操作は初めてだったので、とても勉強になりました。

艤装をして12:00頃出艇。冨田さんが見送ってくれました。いってきます!

冨田氏からバルトロメの艤装のレクチャーを受ける

冨田氏からバルトロメの艤装のレクチャーを受ける

■穏やかな上りからハードな上りへ

出艇した直後は超微風。ウィンデックスもぐるぐる回っていました。予報と全然違うねと話しながら、エンジンで沖まで出ることに。すると南西から10kt-15程の風が入ってきました。予報通りの風。一文字の堤防を超えると波もありました。

川西さんと私でヘルムとトリムを交代しながらアップウインドの練習をしていきました。タックも繰り返し練習。普段フルクルーの船に乗っている私は、慣れないダブルハンドにドタバタしてしまいました。北田さんからは外洋ダブルハンドにおける注意点やアドバイスをもらいました。また、普段の練習から波の高い想定、夜間の想定で練習することとの指示を受けました。使い慣れないハーネスにも動きを制限され、様々な面で難しく感じました。

その後、風が20kt近くまで上がっていき、ワンポイントリーフをすることに。これがまたハードでした。波で揺れる船の上でウインチをひたすら回し続けます。段々と目が回ってきてバテました。

ダブルハンドでは、力仕事もちょっとした作業も全部自分でやらなくてはなりません。ちょっとあれやってと言っても誰もやってはくれません。自分1人または2人という、限られた手を使って全ての動作をやるしかないのです。そのために必要なのは段取り。何かを行うためには、全ての手順を把握し、想定した順番通りに、スムーズに行う必要があります。何か一つでも抜けてしまうと、無駄な動きが発生し、時間がかかってしまいます。時には致命的なミスに繋がることもあります。今回の練習で、1人でやってみて初めて、普段分かったつもりになっていたことが多くあることに気付きました。段取りが大切、繰り返し練習して体に覚え込ませることが大切、ということを、身を持って実感することができました。

出港時は超微風

出港時は超微風

ヘルムとトリムを交代しながらアップウインドの練習

ヘルムとトリムを交代しながらアップウインドの練習

■船酔い、休憩

リーフは無事終わりました。が、波で揺れる中全力でウインチを回し続けた私は、ふらふらでした。(体力のなさを痛感…)クローズリーチくらいで走らせながら少し休憩。「空腹だと船酔いするから何か口に入れなさい。」と北田さん。気づいたらもう14:00。朝ごはんから何も食べてなくて確かにすごくお腹がすいていました。何かお腹に入れないとと思いウィダーを飲みました。そしたら気持ち悪くて吐きました。大阪湾で吐いたのは初めてです。吐いた後、また無理やりサンドイッチとおにぎりを詰め込みました。また再び気持ち悪くなって吐きました(笑) なかなかハードだなと思いながらも、ラットを握らせてもらっているうちに、気持ち悪さも自然と消え、風を受けて走らせているうちに、すぐに楽しいという感情に変わりました。風が気持ちよくて、幸せな気分です。単純ですね、私(笑)

ラットを持つと元気に

ラットを持つと元気に

学び:★空腹では酔う。お腹減る前に食べる。

★体力とパワーが必要

■下りの練習~日の入り

たくさん上ったので次は下りを練習。川西さんと交代でヘルムの練習をします。波に合わせて走らせる練習ができました。

そして、日も傾きかけてきた16:00頃、交代で夜間のセーリングに向けた準備をすることにしました。服の重ね着、ヘッドライトの装着、航海灯の点灯等を行いました。

16:30頃からはジャイブの練習。繰り返し練習し体に覚え込ませます。練習するにつれ、重いメインを引き込むのがだんだん辛くなってきましたが、やっていくうちに川西さんとの息も合ってくるのが分かり、できるという実感ともっとうまくなりたいという気持ちが、モチベーションへと繋がっていきました。

この日の夕日もとても綺麗に見えました。

この日の夕日もとても綺麗に見えました

■西宮入港~朝

18:00頃、夜間に強風の警報が出ていることから、この日は西宮に入港し、ハーバーで夜を過ごすことになりました。当初のオーバーナイトの予定が変更になったのは残念でしたが、また明日の練習に備えてしっかり体を休ませようと思いました。

19:30頃、新西宮ヨットハーバーへ入港。蔵田さんと木村くんが迎えに来てくれました。お二人も一緒に反省会。寒い中来ていただいてありがとうございました。

解散後、北田さんと川西さんと3人で今日の振り返り。今日の疑問点や色々な質問に丁寧に答えてもらいました。夜はしっかり寝てまた朝出港することに。2月の夜、まだまだ寒かったです。

【トレーニング2日目】

■起床~出艇

朝6:00過ぎ、起床。風も穏やかで爽やかな朝でした。

天気も良く、朝日も綺麗、静かなハーバーでヨットの上で朝食を取る。なんて幸せな時間なんだと思いました。こんなに幸せでいいのかと思いながらも、せっかくなので贅沢な時間を満喫しました。

8:00にいざ出艇。ここからは気持ちを切り替えてトレーニングモードで挑みます。

バルトロメ号で迎える爽やかな朝

バルトロメ号で迎える爽やかな朝

■上り練習~ジェネカーの練習

1日目と同じく、まずは上りの練習。5-10kt南の風、沖へ向かいます。

昨日とは反対に、時間の経過と共に段々と風が落ちてきました。沖でジェネカーを上げ、ジェネカーの練習。5kt程の風の中、ひたすらジャイブを繰り返し練習しました。練習には丁度良い風で、川西さんと息を合わせながら何度も練習することができました。次回の練習では、さらに強い風の中でもできるよう、今回の復習とシミュレーションを行っていきたいと思います。また、今回は、ジェネカーの上げ下げについてはあまり練習できなかったため、今後の課題としたいと思います。

■北港入港~片付け

16:00に北港に入港しました。冨田さんがお迎えに来てくれました。

2日間、お世話になった船に感謝を込めて、丁寧に片付けと掃除をしました。

北港に入港して片付け

北港に入港して片付け

【まとめ】

今回の2日間のトレーニングでは、とても濃い時間を過ごすことができました。上り、下り、ジェネカー、とダブルハンドでの基本動作を、様々な風域で練習することができました。そして、北田さんからは外洋ダブルハンドレースの際のアドバイスや経験談等、多くのお話を聞くことができました。

また、2日間という短い時間でしたが、今回の練習を通して、これまであまり経験のなかった、ダブルハンドというものの魅力を少し感じることができた気がし、嬉しく感じています。ダブルハンドは、想像していた以上に学ぶことが多く、少ない人手で大きな船を動かすために試行錯誤を繰り返す過程は、大変ではあるけれど非常に面白く感じました。現時点ではできてないことも、今後繰り返し練習していくことで、自分の身に付けていけたらと思います。

2日間、ヨットを貸してくださった森村オーナー、企画いただいた北田さん、一緒に練習させてもらった川西さん、そして協力してくださった全ての皆様へ感謝を伝えたいです。本当にありがとうございました。今回学んだことを、今後の活動に活かしていきたいと思います。

川西由美子レポート

これは、学連出身でもなく「細々とヨットに乗ってきた年数だけはソコソコ長い」が、振り返ってみれば「全然、スキル身についてないじゃん!」な私が、大変ありがたい機会を得て、JOSAの北田代表にトレーニングをしていただいた2日間のレポートです。

◆今回のトレーニング、それは準備の段階からすでに始まっていたのでした。
3月某日、大阪で練習するとの連絡をいただき、「3月でナイトはどんなに寒いか!?、カッパどうする??」と内心慌てふためいていましたが、オーシャンレーサーとして活躍しておられる北田さんから、ご自身が実際に使って見られた情報なども含め装備について事前にアドバイスをいただきました。

① 装備→着るものの選択、レースに於いてはこれも重要な要素
結果的に警報が発令され、夜間は新西宮ヨットハーバーへ入りオーバーナイトセーリングはできませんでしたが、まだまだ寒いこの時期、防寒対策はどうすればよいのか、ただ暖かければ良いというものでもなく、掻いてしまった汗による冷え対策も考えなければいけないこと、カッパの中に着るものに関してはアウトドアウェアのメーカーがいろいろな商品を出している中、快適性に優れているおすすめの物など、色々と教えていただきました。
北田さんからお話を伺って、「着替えの回数・労力を減らすこと」、「常に汗冷え対策=汗を吸って→速く蒸散させドライな状態を保つこと」が重要になるなど、外洋セーラーは着るものもシビアなのだなと勉強になりました。
ところで、最近は何でも「ネットで購入亅という選択肢があります。また、実店舗に行けば試着は出来ます。しかし、サイズや着心地などの確認はできても、「実際に使ってみたらどうなのか?」は、分かりません。かと言って、いくつも「買って、実際に試す!」には、ヨット以外の節約を相当がんばらなくてはなりません!!なかなか、簡単にはできない。なので、使った人の感想を参考にしたい!となるんじゃないでしょうか?
「結果、オーシャンレーサーは何を選んでいるの?」そんな情報をお知りになりたい方は、今後、北田さんの戦闘服に関する記事を見逃さず、是非ともご参考になさってみられては如何でしょうか。

② 腹が減っては戦は出来ぬ。さて、ヨットの上での食料は?
トレーニング2日間(当初の予定はオーバーナイト)の食事をどうするか?、ここは北田さんのアドバイスを受けずに、一旦、自分たちで考えて準備をすることになったのですが。「さて、どうしたものか」と悩むことに。
ロングレース経験値ゼロの私が頭に思い浮かべるのは、コンビニのおにぎり・パン、ポールウィンナー、6Pチーズ、バナナ、パウチに入ったゼリーなど。時に慌てて、時にのんびり「ソーセージレースの合間に」食べるものを考えてしまいました。
もし、クルージングだったなら、たいてい「停泊」して調理=火を使う。なのでヤカンを押さえながらという事はあまりないと思うのですが。ロングレースなどを想定し、走り続けながら「食事=栄養」を摂ることとなれば、お湯を沸かすのも一苦労だなぁと想像します。かと言って、You Tubeなどで、ちっとも美味しくなさそうな「シリアル的なもの」をマグに入れて食べているVolvo Oceanの動画を見ていると、やはり頑張って湯を沸かし20世紀の偉大な発明カップヌードル等を食べたいと思ってしまう私です。しかし、汁物は危険、ならば焼きそば?
なんと、今はササっと食べられて美味しいフリーズドライ食品がいろいろ有るそうです。特に海外の事情などは、全然分からないので、そういったお話も伺えて参考になりました。

◆出航準備と航海計器のこと
今回のトレーニングでは、ありがたいことに大阪北港ヨットクラブのバルトロメ艇に乗艇させていただきました。オーナーはメルボルン大阪ダブルハンドヨットレースに、この艇で参加されており、5500マイルを完走されています。
出航前にバルトロメ艇のボースンの方に、ガスやトイレの使用方法、コックの位置などをお教えいただき、また、バルトロメ艇の航海計器を担当されている方から、使用方法などを出航前に説明していただきました。私自身は、これまでJ24等で活動させてもらっていたのですが、航海計器を触ったり、オートパイロットを使ったりという経験がほぼ皆無、たまにお邪魔するクルージング艇でオーナーが操作されているのを見ているだけでした。ですので、まったく「なんじゃこれ???」という訳ではないのですが、なんとなくしか知らなかったところから、色々な機能について教わり、「使用が許されているレースでこれらを使いこなせれば、なんて頼もしい相棒なんだ!!」と思うとともに、「これ、いきなりじゃ使いこなせないなぁ…操作の練習が必要や。今回は、そういう点でも練習をさせてもらえて本当に有り難いなぁ。」と強く思った次第です。

◆いよいよ出航!
今回のトレーニングでは、ハーネスラインを使うことを想定し、ライフジャケット(自動膨張式)とハーネスライン(Wアクションの2フック)もお借りしました。
これまで、私自身はインフレータブルのライジャケ使用経験がほぼ無く、自分で持っているのは浮力体の入っているものです。また、これまでにハーネスラインを使ったのは、回航等で3回ほどしかありませんでした。
動作の度に、必ず確実にどこかにフックしておくことは、慣れないと大変です。これまた練習ですし、どんなものを選ぶかによって、取り扱いのし易さが異なるので、買う時はきちんと選ばなければいけないなと勉強になりました。また、北田さんはPLBやヘッドランプ等のツールをライジャケに後付けカスタマイズされていて、そのお話が参考になりました。
さて、今回のトレーニングでは大学のクルージング部から社会人の現在もビッグボートで活躍しておられる守屋さんと御一緒させていただきました。北田さんにコーチングしていただきつつ、ヘルムとクルーを交代しつつ、クローズホールドで走ってみたり、タックを前後入れ替わって練習したり、風が上がればリーフをしたりと、初日は艇に慣れるべく、変化する風の下、日が暮れるまで帆走し、当日夜は風が非常に上がるかもしれないとの予報から新西宮ヨットハーバーへ(避難)入りました。入港後、簡単に船を片付けて、明日のトレーニングへ向けて就寝しました。停まっている状態での作業でいたが、ヘッドランプが無いと足元や手元が見えにくく、夜の作業は大変だと改めて実感しました。

夜間の作業はヘッドランプが必須

夜間の作業はヘッドランプが必須

◆2日目
思いがけず、ハーバーで朝日を浴びることとなり、朝食後に出航。
上りの走りではターゲットボートスピードに近い艇速を目指し、自分たちで考えてセールトリムを行いました。バーバーホーラーの位置や、メインのトラベラーの位置などを変えて試行錯誤をし、実際の変化を感じてみることができました。恥ずかしながら、これまで風向風速や艇速をリアルタイムできちんと確認しながら走らせるといった経験・機会がありませんでしたので、単に感覚や見た目だけでなく、数値を確認することにより、より正確に走りの状況を把握し、走らせるという経験をさせていただくことができました。
その後、前日にできなかったジャイブの練習を、基本的な動作を確認しながら繰り返し行いました。最初の内は、舵を持ってもシートを持ってもこわごわという感じで、思い切ることができず、艇を回すタイミングとジェネカーを飛ばしてシートを引き込むタイミングが合わなくて、返りかけたところを戻し再チャレンジとなってしまったり、トリマーは結構な大汗を搔きました。十分に時間をとっていただき、何度も繰り返し練習できたので、良いタイミングのイメージを掴むことができました。そして、ここでも計器の情報を確認しジャイブ後もTWA145°で上り過ぎず落とし過ぎず、キープすることを強く意識することができました。私の首根っこのセンサーでは145°をキープすることは難しく、計器と情報を最大限に活かし走ることを考えなければならないと学習しました。
この2日で教わった知識や情報はたくさんあり、本当にトレーニングの機会を得ることができ、感謝をしております。

コクピットで試行錯誤

コクピットで試行錯誤

トリマーで大汗を搔く

トリマーで大汗を搔く

◆振り返って
かつて、ヨットなんて何処か遠いお金持ちの世界、一生ご縁など無い、と思っていました。ところが、ひょんな事から45ftのレース艇に乗せてもらい、その後も機会を得ることができ細々とヨットに乗ってきました。5年前、ご病気で乗れなくなったオーナーから30ftヨットを譲ってもらったことをキッカケに、現在は家から30分の所に23ftを係留しています。単なる憧れからヨットに乗せてもらい、20年程かかって、やっと自分で操船して乗るようになりました。
しかしながら、じゃあ自分で長距離航海ができるか?となると自信がありません。
できるもんなら、ロングレース・オーシャンレースへ挑戦をしてみたいと夢想しても、自分に足りないものばかり。それならば、経験を積まねばと考えてみても、まず練習の環境を自分で整えるのは、非常に難しいと思いますし、具体的に何から始めるか?
先達から教えを得たい、コーチに学びたいと考えても、まずそんな方がいるのか?、いったい何処に??、どうやって接点を得ることができるのか???
最初は何もかも分からないし、そんな道は特別な人にしか開かれていないんじゃないか、やっぱり出来ないよねとハナから諦めるかと思います。今回、私はJOSAのトライアルと言う形で、この2日間のトレーニングに参加させていただくことができ、もっとドンドン乗って、確実にできることを増やしたい!、ボーッと乗るのではなく、頭で考えて身に付けよう!、最初から学び直しと思って頑張ろう!と、俄然やる気が沸いてきたのでした。気付けば40を過ぎ、世間一般では立派な中年。しかし、クルーザーヨットの世界では、もうしばらく若者ぶらせていただき、自分で限界を決めずチャレンジしていきたいと思います。
最後に改めて、今回のトレーニングに参加させていただきまして、ありがとうございました。また、バルトロメ艇をトレーニングに使わせていただき、ありがとうございました。

川西氏が2020年7月22日(日)大阪北港ヨットクラブのクラブレースにバルトロメで参加された時のレポートはこちら

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