ワールドセーリング認定シーサバイバル・メディカルトレーニングレポート
こんにちは。広報の堀内です。先日北九州の日本サバイバルトレーニングセンター(NSTC)で行われたJOSA主催のワールドセーリング認定シーサバイバル・メディカルトレーニングコース(2月28日~3月2日の3日間)に参加された方々のレポートをお届けします。
今回のトレーニング参加者は、川西由美子さん、鈴木裕介さん、守屋有紗さん、吉富愛さんの4名です。JOSAからサバイバル担当の北田代表と、メディカル担当の森村理事がトレーナーとして参加しています。
参加者のレポート(五十音順・敬称略)
川西由美子レポート
受講の感想
これまで本格的なサバイバルに関する講習を受けたことがなく、基本的な知識を再確認する・新しく得ることができ、とてもためになりました。
医療を担当してくださった森村先生からは、医師という専門家であり、実際に外洋レースに出るようなセーラーでいらっしゃる視点からも、海上を想定した内容を加味してお話してくださっていたので、終始集中して聴講させていただきました。基本原則はまず事故・ケガを起こさないことですが、レース中も含めてヨットの上での緊急事態に今回講習を受けた内容を踏まえて、できるだけ冷静に、よりベターな対処をしたいと思います。
また火災の消化や緊急事態を想定した艇からの離脱〜サバイバルスーツの着用〜その上での動作、ライフラフトの使用・ヘリ等での吊上げ救助の体験も実際に「体験」することができ、教科書や映像資料を見るだけと比較して、よりリアルに理解することができました。真にサバイバルな状況下で生存することは、本来は難しい事なのだと思いますが、講義や実習によりその確率が受講前より上がったと思っています。これを機会に安全に対する意識を高く持ち、今回の講習内容を忘れないようにしていきたいと思います。
北田さんからお話いただいた御自身のレースでのあれこれは、先日の大阪でのトレーニングでお話いただいた事も相まって、理解することができたと思います。今回はサバイバル講習でしたが、レースに於いても体調管理:体力をいかに温存し、体温をいかに調節し、パフォーマンスを保つこと、体力と時間のロスを少なくすること、レース中の状況を考えてギアの準備、保管方法、設置方法、いろいろな積み重ねで、トータルでより良い成績を残せるように考えているという点が、難しくあり、面白いと思いました。
北田さんがこれまでやって来たその経験からのノウハウをお伺いすることができたことは本当に貴重でした。
- 少人数で受講できたので、とても贅沢な講習でした。
- 事前に大まかで良いので、講義内容と進行予定が分かると良いと思いました。
- 教科書を事前に配布してもらえるとよいと思った。
自身の場合も無線等の機器の知識が乏しかったが、もう少し予備知識を持って受講できればスムーズに理解できたかと思いました。
鈴木裕介レポート
WSトレーニング受講レポート
鈴木裕介
これまで関東を中心とした外洋レースにクルーとして、あるいは艇長として参加する中で常に意識している安全面。わかっているようでわかっていない、意識しているようでできていない、そんな内容への答えや気付きががある3日間となりました。
これまではOSRカテゴリー3までのレースしか経験がなく、今回対象となるカテゴリー2以上ではどのような要件があるのかまったくわからない状態で参加をしましたが、外洋冒険国家のスタンダードといいますか、歴史と経験から蓄積されたノウハウがギュッと詰まった、そんな印象の3日間でした。
初日のメディカル講習では応急手当、人工呼吸など一般的な内容はもちろんのこと、洋上で想定し得るシチュエーションに対する知識を外洋セーリング経験が豊富な森村医師から講習を受けられる貴重な機会を得ることができました。
これまでも簡単な応急手当の講習会は受けていますが、陸上での事故等を対象としていたため、洋上特有の事情を交えた講習はかなり新鮮でした。
応急手当は講習を受ければ即時対応できるものではないですが、こういった講習会で得た知識があるかないかで生死を分けるシーンも身近に想定されるため定期的な講習受講が必要だと強く感じました。
今回の講習会では低体温症への対処も多く取り上げられました。これまでほとんど聞いたことがない内容ですが、よく考えればとても身近なことでもあり非常に有益だったと感じます。
また、講習会ではより実践的な講習内容も含まれ、これまで触れてきた内容とは一線を画す内容となり、本格的な外洋レースに必要な医療知識に触れることができたと感じています。
フランスでのヨットレースへの理解や合理的な仕組み、緊急時の体制などセーリングが根付くために必要なシステムが確立されていることにも驚きました。
2日目以降はいよいよサバイバル講習。フランスで使用されている資料を基に講習が進んでいき、今回講師を務められた北田代表理事の貴重な実体験、参加メンバーそれぞれの経験なども交えながらの講習は緊張感と楽しさを交えた内容となりました。
2日目の途中では消火訓練が入り、消火器や消火布を用いた消火方法の実体験という、これもまた普段体験できないトレーニングを行いました。船に搭載している道具を用いた消火訓練や船上特有の事情などを交えた講習は大変参考になりました。
3日目はいよいよプールでの実践的なサバイバルトレーニングです。
これまで触ったこともないサバイバルスーツを着込みいざプールへ入水。待機時の体勢や泳ぎ方、救援時のフォーメーション、ライフラフトへの乗り込み、救助時の吊り上げ体験…と濃い半日でした。サバイバルスーツを着ること一つとっても、実際に着ることで思いもよらない大変さがあり、体験して始めて得る気付きが満載でした。
サバイバルは知識や机上の検討だけでは対応できず、訓練で実体験をすることで重要なポイントに気が付けるものと強く感じました。
たとえ週末のデイセーリングでも、自然を相手にする楽しさと厳しさが共存するのがセーリングの魅力の一つと思っています。
サバイバルトレーニングはOSRの要求項目として存在しますが、事故はレース以外でも当然発生するわけで、シーマンシップの一つとして多くのことを学べる機会を得たことに大変感謝するとともに重要性を改めて認識しました。
「日本人セーラーから、母国語で、国内でトレーニングを行う」という北田代表理事のコンセプトが正に実現し、「本物の世界」を経験できたのであろうと感じています。
このトレーニングで得たものを糧に、国内外を問わずこれからも外洋レースへ挑戦していきたいと思います。
最後になりますが、NSTCのスタッフの皆様からも大変熱意ある講習を実施頂き多くを学ぶことができました。
ありがとうございました。
守屋有紗レポート
〈メディカルトレーニング〉
- 有事の際に必要な対応を学ぶことができ、非常に勉強になった。
- 受講前は、けがや病気に対して漠然とした不安や恐怖があったが、今回の受講により、正しい知識を身につけることで実際の現場で対応できる幅が広がると感じた。
今後もより広く深く勉強し、有事の際に冷静な対応ができるよう準備を進めていきたい。 - 実践練習では、普段目にすることがない医療材料など、初めての体験が多くあり、とても貴重な経験となった。
- (次回以降)自分で勉強・練習しておいた方がいい事のリストがあるとありがたいと感じた。
例)ねんざ時のテーピング(足・指・・・)、各症状から考えられる病気など - 講義の仕方としては、対応の羅列ではなくポイントを明確にして教えてもらえたことが分かりやすかった。
例)けがが「体幹の四肢か」、「開放骨折か複雑骨折か」など
〈シーサバイバルトレーニング〉
- 緊急時に備えて、様々な想定での準備を行うこと、有効な手段を把握し、実際にスムーズに対応できる練習をしておくことが非常に重要であることを学んだ。
■消火訓練
- 消火布を用いての消火は、火元に近づく恐怖を感じたが、今回経験したことで実際の火災に対しても、ある程度の自信を持って対応することができるのではないかと感じている。
- 火災の種類と対応についてが初見で勉強になった。
■プール実習
- 初めてのライフラフトやサバイバルスーツに触れ、色々な発見があった。
- ライフラフトの乗り込み後の初期対応やサバイバルスーツの着用などは繰り返しシミュレーション、練習を行って有事に備えたい。
- 教科書だけでなく、実践練習は身につけるために非常に有効だと感じた
- (次回以降)ライフラフトやグラブバッグへ入れる物について、レースクラス・海域ごとにより具体的に知れるとありがたいと感じた。
■サバイバル講義
- 気象と艇の性能のシミュレーションが興味深かった。さらに詳しく勉強したいと感じた。
- 外洋レースでは想定しておくべき場面が非常に多いことを知った。受講前には考えたこともなかった事態についても学ぶことができ、自分の乗る船、海域、クルーなどによって1回1回あらゆる場面を想定しないといけないと感じた。
また、外洋だけでなく、インショアレースを行う上でも役に立つ考え方があったため、今後の活動に活かしていきたい。 - (次回以降)フランスのパワポ(Power Point*編集者追記 )を使用していたため、翻訳が少し分かりづらい箇所があった。目次がはじめにあったが、テーマの切れ目と前後の文脈を理解するのが難しい所があった。
- E-PIRB (Emergency Position Indicate Radio Beacon:通称イーパブ*編集者追記 )やSART(Search And Rescue Radar Transponder:捜索救助用レーダートランスポンダ*編集者追記 )など実際のものを見ることができて、覚えやすかった。
- 全体の講義を通して、こういうヨットに何人で乗っていたらどうするかという想定を何度も考えることができて勉強になった。
- 北田さんのレース時の写真はとても実践を想像しやすくておもしろかった。
- (次回以降)けがの事例、事故の事例を写真付きで見せてもらえると想像がつきやすいかもしれないと感じた。
- (次回以降)教科書のここをよく読んでおいた方がいいというページを教えてもらえると嬉しい。
- 実体験に基づいたお話や安全なやり方も考えていただき、とても勉強になった。
- 少人数のこともあり、たくさんの質問ができてよかった。疑問に感じたことをすぐに解消できてありがたかった。
- それぞれの知識レベルに合わせて全員が理解できるように話してくれて分かりやすかった
吉富愛レポート
Date 2021/ 3 /2
サバイバルトレーニング (2日目3日目)
- セーリングでの実践に則した講習であり、今まで気づかなかった視点を学ぶことが出来た。その中でも、船が完全に沈する場面のどのタイミングでライフラフトに移るかなど、船にもよるが想像することが出来良かった。
- 防火訓練では1人ずつにインストラクターの方がついて下さったので、火への恐怖心を少しやわらげることが出来、より消化に対して冷静に観察し、学ぶことが出来た訓練になった。また、火せんの発火体験では、期限や保存場所の重要さを体験し学ぶことが出来た。
- 救命訓練、防火訓練では、インストラクターの方が丁寧なコロナ対策への対応や、訓練への不安感を除いていただき安心して訓練を受けることが出来ました。ありがとうございました。
- プールでの訓練ではサバイバルスーツの浮力にとまどったが、これが本番ではなく訓練で体験でき良かった。また、ライフラフトに乗った時の初期動作の訓練では、やることは分かっているのだが特殊な環境であることもあり、あせりながら動作をしていたと自覚した。このことから実戦では冷静に対応するためにも、実践での練習や日頃からのイメージトレーニングの重要性を考えさせられた。
- ディスカッションを出来る時間も多く、自分自身の知識を深める機会があったため、習熟度が高かったと思いました。
- 今の時点では、安全意識も高まり知識も付いたが、また期間が空いた後に複数人で集まり、安全に対しての意見交換やディスカッション出来る機会があれば嬉しいです。
多くの方にご協力いただき、実のりのある講習になりました。また訓練設備なども清潔感があり、訓練に集中することが出来ました。誠にありがとうございました。
吉富愛
トレーニングギャラリー
World Sailing 認定コースのお知らせ
主催: 公益財団法人日本セーリング連盟(JSAF)(主管:外洋常任委員会)
実施: 一般社団法人日本オーシャンセーラー協会(JOSA)
日本サバイバルトレーニングセンター(NSTC)
次回日程: 年内に一回実施、来年初旬に一回実施で調整しております。決まり次第お知らせいたします。
会場:日本サバイバルトレーニングセンター
北九州市戸畑区銀座2丁目6番27号 日本水産ビル4階
https://n-s-t-c.com/
講習内容等
・World Sailing 外洋特別規定 6.02 のサバイバルトレーニング(座学・実技) 講師:北田 浩氏(JOSA)
※ 実技は NSTC 講師も助勢します
・World Sailing 外洋特別規定 6.05 の医療トレーニング 講師:森村圭一朗氏(JOSA)
募集定数: 申込(受講料振込完了)先着 10 人
受講者には健康状態確認書、事故時の自己責任承諾書を出していただきます。詳しくは申し込み完了後にご案内します。
受講料: 10 万円 (宿泊・食事等は別途各自負担)
2024/11/12
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小笠原レース「船上のリアル」Part 3