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2022-02-19

 元祖スーパーサラリーマンセーラー「こうたん」65歳にしてWorld Sailing認定海上サバイバル・メディカル講習会に参加

先月1月14日から16日の3日間、JSAF主催のシーサバイバル&メディカルトレーニングが日本サバイバルトレーニングセンター(北九州市)で開催されました。(新型コロナ感染拡大のため、第二回目は延期)

今回受講されたセーリング歴45年を誇る元祖スーパーサラリーマンセーラー「こうたん」こと、今津浩平氏からレポートが届きました。JSAF外洋常任委員会に掲載されたレポートにJOSAで撮影した画像と動画を編集して公開いたします。

今後受講を検討されている方にも、非常に参考になるレポートですので是非ご一読ください。


サバイバルスーツに身を包む今津氏

 2022年1月14日(金)-16日(日)

日本サバイバルトレーニングセンター(福岡県戸畑)

 初めてこの講習会の開催案内を入手したのは、2021年のまだ春前のことだったと思う。今まで何回か日本に外人講師を招いて、外国語で開催されたことのある「海上サバイバルトレーニング講習会」が、いよいよ日本人講師によって日本語で行われるという。先着順申込みと聞き慌てて即日、申込みを入れたことを思い出す。

 当初は21年6月に開催予定だったのだが、新型コロナの拡大のために年明け22年1月開催に延期されることとなった。夏至の頃から一気に真冬へ延期されたわけだが、実技講習は屋内プールで行われるはずなので、寒さの心配はなさそう。冬の季節にひるむことなく、65歳の老体に鞭を打ち、しっかり体調管理を含む準備を済ませた上で、トレーニング参加の日を迎えることになった。

・参加の目的

 このような時、多くの人から尋ねられるのが「なんで、この講習会を受けようと思ったのですか?」という質問だ。講習会参加の実績が欲しいのですか?などと言う少し意地悪な質問があったりするのは、当講習会がWorld Sailing認定だからなのかも知れない。だがそんな狭量な理由で多額な費用を使って小倉まで来る人もいない。私を含め、それ相当の「学ぶ志」をもって臨んでいることは間違いない。

 一方で、セーリング歴45年の高齢者がこの後に及んでセーリングで学ぶことがあるのかと訝る人もいるかも知れない。だが心配無用。幸いなことに、セーリングはあらゆるスポーツの中で最も奥の深い種目のひとつである。だから、質問にはこう答えることにしている。「この齢になっても、ヨットがもっと上手くなりたいから」――正直なところ、参加の目的は、これに尽きる。

 ・講習会の内容:座学

 講習会は、三日間で構成されている。

 最初の二日間は、北田浩氏によるサバイバルセーリングの座学講習とそれに伴う実技講習だ。北田氏はご存じ、日本を代表する外洋レーサーの1人であり、その知識、経験量的にも、当講習会のインストラクターとして最も相応しい人だと言えるだろう。

 テキストには「シーサバイバルハンドブック」の翻訳版を使い、それだけでも濃厚な内容の講習になるのだが、それに加えて、北田氏が座学会場に持ち込んでくれた私物がとてもありがたい。サバイバルスーツは、希望者に着用を許してくれる。また、非常食はその場で実際に食べることができるし、欲しければ持って帰っても良いと言う。また、海外でのみ手に入るサバイバルグッズを実際に見て、触れることができるのも、とても貴重な機会になる。実物があれば、それに伴う質問も生まれ、休憩時間の歓談もまた活発になるものだ。

座学講義の様子(JSAF提供)

・講習会の内容(実技)

 毎日の講習会は、ざっくりと午前中の座学と午後の実技で構成されている。

 まず初日の実技は、消火訓練。クルマに乗って火気を扱える会場へ移動する。注意事項の講習を受けた後、消火作業用の防護服に着替えて、消火訓練となる。消火ブランケットを使用して目の前に燃えさかる火を消して、次に、消火器を使っての消火訓練を受ける。いずれの作業も生まれて初めて。貴重な実技体験ができるのが、今回の講習の素晴らしさだと改めて実感する。

消火ブランケットを使用した消火訓練
消化器を使っての消火訓練

 消火実習の後は、主催者が用意しれくれた信号紅炎の発煙実技。いやはや、今まで信号紅炎は何年にもわたって現物を見続けてきたが、実際に発煙したのは、これまた初体験。紅炎の熱さや視界を奪われるほどの明るさを体感することで、いざ本番での注意事項のようなものを、自分事として考えることができるようになったと思う。

信号紅炎の発煙実技

 さて、二日目の実技講習は、待ってましたのプール講習。会場に併設されたプールに移動して、サバイバルスーツを着用してその着用感を水面にて体感し、また、ライフジャケットがどのように自動膨張するのか、実際に着用してプールに飛び込むことで、確かめることができる。自動膨張に意外に時間がかかることを知り驚いた受講者も少なからずいたのではないかと思うが、このようなことも体感しなければ知る機会は、あまりない。

 その他、ライフラフトに乗ってみて、その狭さ、冷たさ、息苦しさを知り、ヘリコプターを想定した吊り上げ訓練を受け、充実した実技の講習を終えた。

プールに移動して説明を聞く受講者。向かって一番右が今津氏
サバイバルスーツを着用して水面にて体験
ライフラフトを起こす訓練
実際にライフラフトに乗り込み操作する
ライフジャケットの自動膨張を確認
救助を待つまでの水中姿勢を学ぶ
サバイバルスーツを着て海に入る時の試技
ヘリコプターを想定した吊り上げ訓練

・メディカル講習会

 最終日の講習は、朝から夕方まで、森村圭一朗氏によるメディカルトレーニングの座学と実習が用意されている。森村氏は外科医であり、セーラーとしてはメルボルン-大阪ダブルハンドの経験がある。外洋セーリングの緊急医療措置について最も適した日本人講師のひとりだ。

 正直なところ、外洋において医療措置が必要な状況に陥ることだけはなんとしても避けたいし、実際に発生した時に、冷静に対処できる自信はない。今回は念入りな座学講習に加えて、心肺蘇生、骨折、出血の対処法他を実技の部で体験させてもらったが、それでも悲しいかな素人の身としては、メディカルな部分での自信については、その片鱗すら掴むことができなかった。しかし、万が一の事態の際に、どのような対処をすべきかを知識と体感で知ることで、外洋セーリングに対する自信を深めることができるのだと思う。また、それこそが、今回の「海上サバイバル・メディカル講習会」の本来の主旨と言えるのだろう。

メディカル 心肺蘇生の訓練(JSAF提供)
メディカル 創傷縫合訓練(JSAF提供)

・講習を終えて

 私感に過ぎないかも知れないが、私は、三日間の講習を終えて、とても満足して帰宅することができた。今春は、ヨット「ShallonⅦ(first35)」で沖縄―東海レースに参戦する予定なのだが、そのための確固とした心の準備をひとつ済ませることもできたと思う。

 なお、講習から約2週間が経ち、主催者から講習会の認定/合格証書が届いた。

 有効期間は5年だと記されている。あんなに充実した楽しい講習会を受講させてもらい、さらに、このような証書までいただけるとは。参加して本当に良かったと思うと同時に、JOSAと講師のみなさんには心から感謝を申し上げたい。

 また、参加を検討している人たちには、是非、参加をお勧めしたいと思う。

レポート/今津浩平
World Sailing International Umpire、IU SubCommitteeJSAF ルール委員会

※今後、外洋レース、長距離外洋クルージングを目指すセーラーの安全のために、サバイバルトレーニングを毎年1~2回開催していく予定です。(JSAF外洋常任委員会

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