テティス4パラオ脱出記(前編)
こんにちは。2019年末から2020年初にかけて横浜港からパラオ共和国への第1回日本-パラオ親善ヨットレースで見事総合優勝を飾られたテティス4のオーナーでJORA理事の児玉氏からレポートが届きました。突然のコロナ禍に揺れた国際情勢の中で予定されていたチャイナシーレースも延期になり、予定を大幅に変更しなければならない中、いかにしてパラオから脱出されたのか。白熱の脱出記お楽しみください。
前回のレポートはこちら→「日本-パラオ親善ヨットレース参戦記」
文:テティス4 児玉萬平氏
本年1月15日“パラオレース”表彰式が終わって各レース艇の艇長と話し合った。「これから何処に行く?何日に出航する?」
「ラッキーレディ」と「鴎翔(かもめとぶ)」はさらに南下し、ヘレン環礁を経てインドネシアへ向かうため、数日後にはパラオを出航するという。「トレッキー」と「アルタイル」は沖縄‐東海レース参加のため沖縄・宜野湾に向かう予定だが回航要員の手配があって3月半ばに出航予定だという。
「テティス4」はレースメンバー全員が一旦帰国、回航組は改めてパラオに向かうことにし、4月のチャイナシーレースに向け、曲げてしまったブームの交換、サンゴ礁にヒットさせたキールの修理、セールのリペアを香港で行うために2月末には出航したいと考えていた。
1月16日、成田に優勝盾と、航海計器(ほぼ全てが壊れた)を持って降り立ったその時、まさにコロナ騒ぎの幕が上がっていた。刻々と入国禁止国の情報が入ってきた、パラオのお隣のマリアナ、グアムは早々とクローズ、経由地としていたフィリッピンのセブでも死者が出ていた。パラオに行くには日本からの直行便は無く、グアム経由を除くと仁川か上海を経由する、何れもその時コロナ発生が顕著になっていた場所だった。
パラオは不法滞在を防ぐためか帰国の航空券を持っていないと入国させないルールがあり、我々のように航空機で行ってヨットで出国する場合には、大統領が署名する特例扱いの書類を持参する必要がある。ところがこれがコロナの影響なのかなかなか発行してもらえない。入国禁止国の数が増え続け気がせくなか、無駄になっても帰りの航空券を購入しようとする段になって、やっと大統領のサインが入った特例書類が届き、ようやく出発日の2月29日を迎えた。
その間、中国本土の感染拡大を受けてロイヤル香港YCから本年のチャイナシーレースの延期がアナウンスされ、それなら我々も沖縄‐東海レースに切り替えることにして、回航目的地を沖縄とし、石垣・宮古を経由していくことにした。交換ブームの仕向け地の変更、上架整備計画の変更、回航中に寄港する予定だった海外ヨットクラブへのお断りなど、大慌てで連絡を取りまくった。
成田空港ビルはガラガラ、我々以外には数人しかいない。乗り換えは仁川、こちらも全く人がいない。飛行機もガラガラで席を連ねてベッドにする。拍子抜けするくらいだが安心もした。
パラオの空港では乗客全員のおでこに体温センサーを接触(!)させて検温、こちらの方がよほど危険な感じがしたが、空港を出るとマスク姿は誰もいない。至って平穏・・早朝のハーバーに着くと夜勤のガードマンはテーブルの上でおカミさんと一緒に就寝中、いっぺんにパラオモードに切り替わった。
それから出航までの間は、全交換した航海計器の取り付け、セールの応急修理、食料・飲料の買い出しとよくある回航準備風景だったが、いつ出国制限がかかるか冷や冷やしながら3月3日を迎えた。お世話になったハーバーやツアー会社のスタッフに見送られて舫を解いたときは妙にホッとしたことを覚えている。聞けばその後一週間ほどしてパラオ発着の航空便は全便運航停止になったという。(間に合った!)
パラオ~石垣島回航9日間のうち8日間は、これぞトロピカルセーリング・・というべき最高のコンディション。風向もリーチングからクォータリーで、最高でも15㏏止まり、パラオレースの最中は20-30㏏、常にスプレーを浴び続けていたことと比べるとまさに天国。
昼の気温は29℃、ワッチ交代ごとに冷えたパラオ産のビール(ご丁寧に黒、白、ハーフの3種類がある)を空け続け、たまに来るスコールを待って裸になって水浴びをする。それが過ぎれば夕暮れのドリンクタイム。製氷機をフルに働かせて作った氷でグレンフィディックのオンザロック・・・至福の時間!
夜は船尾に南十字星、船首に北極星が同時に掛かっていて、前後の星を見上げながら・・この夜はワイルドターキーだった。
(後編に続く)
2024/11/12
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